「幻の探偵雑誌」のはなし

 今回は書籍ネタです。

 先日のソニックシティの帰りに古本屋へ入って光文社の「幻の探偵雑誌」の古書を数冊買い求めました。
 このシリーズはここ10年くらいの間に少しづつ買い足していますが未だに全巻揃う所に行っていません。
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いわゆる探偵(あるいは推理小説・ミステリ)の歴史には 「新青年」が全盛だった昭和初期、新青年の退潮と入れ替わる様に岩谷書店版「宝石」が台頭した敗戦直後から20年代後半にかけてのふたつのピークが存在すると思います。

 このふたつに共通するのは一言で言えば「熱気」に尽きます。
 前者は探偵小説の勃興期、あらゆる試行錯誤が試されSFや時代小説、冒険小説などとのクロスオーバーの中でミステリの骨格が形作られていた時期ですし後者は敗戦に伴いそれまで抑圧されていた探偵小説が解禁されそれまで鬱積したものを吐き出すかのように旧世代作家やこの時とばかりに台頭する新人たちがその意欲を爆発的に開花させた時期です。

 それらの時期だけに存在できた無数の同人誌や雑誌(その一部は3号でつぶれる事から「カストリ雑誌」とも呼称された風俗雑誌ともクロスオーバーしています)を丹念に拾い集め、代表作を網羅したのがこのシリーズです。
 ここの出てくる作家たちには後の巨匠や人気作家になる人もいますがその大半がこの時期だけ作品を発表し、1作~数作で消えてしまった作家たちです。
 実際それらの経歴を見ても「経歴不詳」で終わっている方々が多く、文字通り「幻の作品」「幻の作家」となっている物が大半でしょう。

 今となっては物故された人も多いでしょうし、こうした形で取り上げられなければそのまま忘れ去られたと思います。


 今読めばその構成や演出に失笑物、噴飯ものの描写があるのも確かです。
 ですがそのどれにも読んでいて(鬱屈したりいらだっていたりと表現は様々ですが)物凄い勢いが感じられるのです。

 この点では最近の「纏まりだけはあるけれどつまらない」「自由に縛られて逆に不自由になってしまった」小説にはないパワーがあります。

 これはひとり探偵小説に限らずあらゆるジャンルで言える事ですが萌芽期~勃興期には出来で言うなら荒削りで洗練性に欠けるものの勢いだけは物凄いという現象がよく見られます。

 その過程では当然、後の世から見ると怪作や駄作も数多く出るのですがそれらのなかで切磋琢磨するプロセスがあったからこそ一握りの傑作も生まれてくる訳です。
 尤も、これらの本に登場する作品群が怪作とか駄作という訳ではありません。
 むしろそれぞれの雑誌の中から選び抜かれた上質な上澄みで構成されている分、本当の意味での「時代の再現」とはならないとは思います。

 或いはこのシリーズの解説者の一人が語っている様に「作品だけでなく広告や投書、表紙や目次に至るまですべてがあって初めてその雑誌の本質がわかる」というのが本当の所でしょう。
 

 ですが上澄みとはいえ、目に触れてこなかった作品をも拾い上げる事で当時の空気というか、雰囲気を全体として捉える事の出来るという点で非常に面白いシリーズですし、通して読んでいくと不思議な元気さをもらえる様な気もするのです。



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