「甘い蜜の恐怖」

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 先日のウルトラQは「甘い蜜の恐怖」
 製作順としてはごきく初期のはなしで巨大なモグラがひたすら暴れまわるというだけのシチュエーションに人間の持つ嫉妬の感情の恐ろしさを戯画化した「アンバランス」志向の一編です。
 
 ですから怪獣と言っても(モングラーなどとそれらしいネーミングこそされていますが)ただの巨大なモグラですし、造形自体も特に胴体部分は大きな頭陀袋にしか見えないという難点があったりします。
 Qの怪獣はグループとして大きく分けると東宝からの借り物を改造したものと後半に登場するオリジナル造形の「正調ウルトラ怪獣」の二つに区分されますがモングラーはそのどちらにも該当しない特異な位置を占めます。
 その証拠に後者の怪獣は再改造されてウルトラマンに使い回されるケースが多かったのに1クール後半のモングラーやタランチュラ、ガメロン等はそうした処置も受けずに1回限りで消えていった悲劇の怪獣です。
 既存生物の巨大化で怪獣らしい魅力、使い回されるだけの魅力に乏しかったという事かもしれません。

 その一方、本作の興味は専らミニチュアセットに行ってしまうのも無理からぬはなしですが意外とこれが面白い。

 冒頭で貨物列車がモングラーが掘った穴にはまりこんで転落するシークエンスがありますが、上空からの俯瞰で線路周りの風景が再現されている所などは正に「レイアウトの空撮」的な魅力があります。
 特に緩やかな線路の曲がりなどが再現されている所は(製作者の意図とは異なる感じ方だとは思いますが)ミニチュア臭さ以上に「縮小風景」の魅力を感じる部分です。
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 転落する機関車はB6と言う明治の主力貨物機関車でQの製作当時も何両かが入替や私鉄の貨物機として現役だった名機です。
 恐らくこの数年前の「青島要塞爆撃命令」で使われたミニチュアと思いますが、以前実物の模型を「特撮博物館」の展示品で見た事があります。
 「鉄道模型」としては相当なラージモデルでひと抱えもありそうな図体ですが面白かったのは動力に内燃エンジンを使っていた事です。
 普通これほどの大きさの機関車なら実物通りに蒸気機関でモデル化される所ですから、こういう使い方は趣味としての鉄道模型ではまず使われない技法です。

 ですが一方で特撮のミニチュアとして考えると製作に手間が掛からない、速度の調整が容易な事や、ボイラーの破裂のリスクがないというメリットの方が大きかったのでしょう。
 この辺りは模型と特撮のミニチュアのポリシーの違いを肌で感じる部分です。
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 クライマックス、山腹の大穴から出てきたモングラーに戦車隊が砲撃を加えるシーン。
 前述の様に「ただ大モグラが出てくるだけ」と言うシチュエーションなのにかなりスケール感のある大セットが組まれているのに驚かされます。
 こういうシーン、安く上げようと思えばそこいらの野っぱらに単純に土でも盛って適当に戦車の模型を手前に配置するだけでも済ませられるカットと思いますし事実、以後の特撮ヒーロー濫作時代のミニチュアセットではそういうレベルの物をよく見かけます。
 ですがこの回ではきちんとした山のセットの手前に怪獣との比較のために置かれたミニチュアの乗用車の周囲の地面もきちんと造営されていますし、戦車の配置された部分も強遠近法を駆使した正攻法の画面構成がされています。
 恐らくですが画面に入らないフレームの両脇にも余裕を持ってセットが組まれていたのではないでしょうか。

 シーンの扱いは単純でも決して手を抜かない製作姿勢が感じられると同時にそれゆえにウルトラQが現在でも別格として語られている理由の一端を垣間見る気がします。


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コメント

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「子供はうそを見抜くのがうまい」ニコニコ動画で再確認したら本田猪四郎監督の言葉のようですが、だからこそ手を抜かなかったのかも。

補足を

 機関車は光山市交通局さんが詳しく解説して
いるので私は補足と言う事で(爆)
この回の主役はなんと言ってもトヨペット・マスター
ラインです。
マスターラインは初期の頃にモデルペット製が
近年はエブロを始め各種出ていますが2ドア仕様
の物が今回の4ドア物はモデルペット製を含めて
数点かと思われます。
しかしモングラー編では独特の観音開きシーンを
始めクラウンパトとのツーショットもありで白黒な
点を除けば3丁目の夕陽よりリアルな映像です。
で甘い蜜の恐怖は以外に他作品の影響が感じ
られ例えば異変があって研究所、万城目、警察
がジープやマスターラインで駆けつけるシーン
はラドンそして一平君が驚いて観る大きなミツバチ
は50年代のアメリカ映画・・・確か未公開作品です
がキャンパスの怪物。
これにも突然変異の猿人や巨大な蜂が出ます。
モングラーが地中を進み村が壊滅するシーンは
地球防衛軍のミステリアンによる地殻変動。
モングラーを生み出した?伊丹がアンバランス
ゾーンへ陥るのはミステリーゾーンで御馴染な
パターンを意識した作風です。
Qの前身アンバランスでは日本SFクラブが参加
していた関係もあって東宝、米国SF映画そして
TV作品を取り入れた実に贅沢な作品となって
ます。
先ほどのラドンですがラストシーンは流用していま
すしシャーマン戦車砲撃シーンも地球防衛軍から
でしたね(笑)
もう少し先の回ですが、アッと思わせる電車が
出てくる回も?

Re: タイトルなし

>柴乃さん

 実際子供はこういう時は残酷なほど正直ですね。うちの子供も変身ブームの頃のテレビ特撮のちゃちさをしっかり指摘しますし(汗)
 特に映画畑のスタッフは「お金を払って観に来る客」という意識がしっかりしているだけにその怖さも理解していたのでしょう。

 同時期のマグマ大使やスパイキャッチャーJ3も映画顔負けの特撮でしたし。

Re: 補足を

>星川航空整備部さん

 マスターラインとはまた渋い所を突いてきましたね。
 
 私はTLVの救急車仕様を持っていますがまさかこんなのがトミカで出るとは思いませんでしたね。それどころかNゲージスケールのカーコレクションでも製品化されましたから驚きです。
 (うちのレイアウトでも数台徘徊しています笑)

 仰る通り50年代のハリウッド映画は「ふつうの生き物が巨大化する」コンセプトの怪獣ものが多かったですね。最近では著作権切れの関係からかそれらの旧作が1500円位で多数DVDになっていますから良い時代になった物です。
 私も何作か持っていますので折を見てそれらも紹介する予定です。