「死を呼ぶ電波」

 怪奇大作戦コミカライズのはなし
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 今回は影丸譲也版「死を呼ぶ電波」から。

 テレビのブラウン管(死語)の銃の映像から実際にレーザー光線が発せられて視聴者を射殺すると言うシークエンスは科学犯罪らしさを感じさせる点で恐怖の電話と並んでSRIらしい題材ではあります。
 ただ、惜しい事にこれとほぼ同じシークエンスは本作の前年に「キャプテンウルトラ」のラジゴン星人の回で既にやってしまっています。
 その上、向こうは「三葉虫を怪物化させたようなモンスターがテレビ画面から飛び出してくる」ショッキングさ&「後を追ってきたキャプテンまでもが同じ様にテレビから飛び出してきて戦い始める」という展開だったので斬新さとカタルシスで上回ってしまっていたのが何ともです。

 さて、テレビ版ではかつて被害者たちに謀殺された小山内久市の息子が科学犯罪を用いて復讐をはかるという仇討ネタ。
 なので全体に復讐に伴う陰惨さを感じさせる演出(カーラジオや電話、飛行機無線でじわじわと相手を追いつめる描写に顕著)がなされています。

 このコミカライズでも基本的なアウトラインはほぼ同じですが一番の相違点は「犯人が謀殺され(かけ)た小山久市本人だった」点です。
 (コミカライズ版では「小山内久市」ではなく「小山久市」です)

 しかも作者の作風を反映してかこの小山久市のルックスときたら読者の共感を呼びそうにない「殺し屋かギャング」的。
 冒頭でターゲットである村木剛三の息子の村木秋彦を射殺したあと「画面の中でいつまでも高笑いしているトレンチコートにサングラスのおっさん」は科学犯罪を通り越してギャングの抗争劇を見るような錯覚を感じさせます(笑)

 そもそも狙われる村木剛造もこの劇画ではもろに悪代官風のルックスと描写で読者の共感をまるで呼びません。
 SRIの捜査も他の話に比べて妙に淡々としていて犯人にも標的にも感情的な思い入れが感じられないと言う見事さです。

 ラスト、飛行機で逃亡を図る村木剛造に飛行機無線を介して遠隔操作を図る小山久市。
 テレビ版でも犯人は運転手として村木家に入り込んでいて各種のトリックを弄していたのですが、本作ではその点は同様なものの以下の展開でまるで異なる印象を与えるのでした。

 「うそだ!小山はもっと若かったはずだ!!顔もまるで違う!!!」
 「・・・フフフ」(バサッ)
 「わははは!あれは変装をしていたのだ!今のおれの顔をお前に見せてやれないのが残念だ!!」
 本当に残念だぜ!!」

 テレビで本作を見ていた人間がこれを読んだら唖然とすること必至の名シーンです(爆)

 テレビではアジトを発見された小山内健一が三沢に自分の心情を吐露した挙句、放電盤に身を投げて自殺すると言う切なさを感じさせる最期を遂げるのですが、

 このコミカライズのクライマックスでは小山久市は「アジトに乱入した三沢との揉み合いで首の骨が折れて死亡」村木剛造は「電波解除が間に合わずセスナごと海に突っ込み死亡」
 この頃のハードボイルドアクションに良くある無常感あふれる展開です。

 テレビでは亡き父の敵討に「復讐日記」を連綿として書き綴りつつ冷静且つ確実に憎しみを増幅させる小山内健一は復讐のクライマックスでも冷酷なほど淡々と語り続ける描写に凄みを感じさせています。
 が、このコミカライズの小山久市は終始とにかくハイテンションな復讐の鬼。
 全く同じ話が同じ展開で描かれているのにまるで印象が異なります。

 それゆえにテレビ本編で科学を復讐のために使うことしかできなかった小山内健一と同じ様な過去を持ちながらSRIに全てを賭した牧史郎との対比が語られる様な余韻がコミカライズには見られず、「事件は終わった。引き上げよう」という町田警部の一言で唐突に幕が降ろされるラストはハードボイルドそのまんまです。

 本編はこれまで読んできた怪奇大作戦のコミカライズの中で最もハードボイルド臭の強い一編ですし、テレビ版ではこういう雰囲気の話は殆どありませんでした。
 と、言いますか「怪奇大作戦にハードボイルドは似合わない」というのがよくわかる一編でもあります。
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 さて、テレビ本編に登場する劇用車として印象的なのは冒頭で村木明彦が自宅に乗りつける「ジャガーEタイプ」
 村木剛三が乗っているメルセデスベンツ(車内テレビ付き)のふたつが目につきます。

 写真のモデルは最も印象が近いNゲージサイズのものですが、あの頃庶民が憧れ且つ恐れる「ベンツ」のイメージが凝縮したようなデザインではあります。

 さて、影丸版の怪奇大作戦は掲載誌の都合からか、この回で終了し中条健太郎版にバトンタッチします。
 これも見どころの多いコミカライズですので追々紹介したいところです。



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コメント

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怪奇大作戦は怖いもの見たさで見ていたものの、怖くてブラウン管を正視できなかったものがほとんどです。

正式なタイトルも覚えていませんが、テレビ画面に銃が映って登場人物が死んだことと「心臓大やけど」という台詞だけは覚えてます。

ウルトラQのほうは子供ながら見ていていろいろ覚えているのに不思議です。

>柴乃さん

 本放送当時私のトラウマだったのは「散歩する首」でした。
 これに限らず怪奇大作戦は「よく日曜の晩御飯時にこれだけアシッドな絵を見せられたものだ」と思う画面が多かったですね。