「氷の死刑台」

 MXでの怪奇大作戦の再放送が昨夜終わりました。
 とはいえこちらはまだネタが残っているのでウルトラQ同様暫くフォローを続けたいと思います。
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 今回は中城けんたろう版の「氷の死刑台」から

 それまでの影丸譲也版のコミカライズが全体に劇画タッチだったのに比べると中城版は少年誌らしい絵柄になり当時の子供にはとっつきやすい感じになっている印象があります。
 但しキャラクターの描き方や性格描写は影丸版とは些か趣が変わり少し面食らう所もあったりします。

 特に影丸版や桑田次郎版では冷静なリーダー役だった的矢所長は中条版では「星一徹みたいな顔」で且つ性格もやや怒りっぽくなりある回ではすぐに三沢を怒鳴りつけたりします(笑)

 又、他の作家では各々が自分なりに消化したルックスで描いていた牧史郎ですがその中で唯一中条版は「岸田森に似せようと努力した形跡がある」点で特徴的です。
 但し少年誌の絵柄で岸田森をそのまま似せようとするのにはやや無理があったのか、同じ回でもコマによって顔つきが二転三転している事があり苦心もしのばれます。

 その中条版の第一回を飾るのはテレビ版でもひときわ印象深い「氷の死刑台」でした。

 本作は「市井のサラリーマンが一日だけささやかな日常からの逃避を図るつもりでマッドサイエンティストの罠に掛かりそれと知らないまま7年間肉体改造されて冷凍人間にされてしまう」事の恐怖と悲劇を描ききったものです。
 これは本作以前に東宝が「ガス人間第一号」で描いた怪人物の換骨奪胎的な内容で、きちんと膨らませれば長編映画が一本作れる程の密度がある脚本だったと思います。

 コミカライズでは基本的にテレビと同じストーリー展開なのですがストーリーを膨らませるアレンジがいくつか加えられています。

 本編では岡崎の家族は岡崎の失踪後ほどなくして家を引き払い行方不明になっているとの事で終始画面には姿を見せません。
 恐らくは製作側が「家族を絡ませると30分のボリュームに納まりきらない」と判断したのではないかと思われます。
 更に家族の存在を意図的にカットアウトさせる事で「世界とのつながりを断ち切られた岡崎の孤独感」に焦点を合わせる構成になっていました。

 テレビと同様に冒頭は冷凍人間が脱走して研究所の所員を殺害する所から始まるのですがコミカライズでは目撃者の少年として岡崎の息子の「和男くん」が登場します。
 その後も岡崎がかつての自宅を訪ねてその変わり様に驚くシーンでもかつての自宅の近くをうろついていたりします。

 SRIの追跡調査でも岡崎が和男の父親である事が判明するものの、これ以上の犠牲を出さないためにサンビームの使用を決断(!)

 岡崎を実験に使ったマッドサイエンティストの加瀬は本編でも再び実験室に戻ってきた岡崎を見て発狂します。
 テレビではこれと前後してゴジラ対ガイガンでインベーダーを、後にスパイダーマンや宇宙刑事シリーズで善の宇宙人役を印象的に演じた故・西沢利明氏が文字通り鬼気迫る演技で科学者の野心と狂気を演じきって印象に残ります。

 ラスト、テレビでは冷凍人間岡崎はSRIの熱線砲サンビーム500で絶命し、事件は幕を下ろします。
 ですがコミカライズでは冷凍人間と化した父の死を目の当たりにした和男が三沢を責めるシークエンスを加える事で本来の被害者でもあるはずの岡崎の家族の存在をフォローさせテレビがつき放していた部分を読者にも理解させやすくしていました。
 更に「発狂した加瀬が自らを冷凍化して事件からの逃亡と実験の継続を図る」という二重の衝撃を与えて終わりました。
 
 テレビの検討稿では発狂した加瀬は精神病院の一室で実験の妄想を呟き続けるという物でしたがコミカライズでもその時のセリフがそのまま転用されているものの加瀬が自分も冷凍化した点で効果的な幕切れになったと個人的には思います。
 総じて本作は怪奇大作戦のコミカライズの中でもかなり出来が良く、テレビが語りつくせなかった部分を補完した意味でも理想的だったと思います。


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コメント

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氷の死刑台

 子供時代に観た怪奇はSRIがウルトラ警備隊や
科学特捜隊のカラーを引きずっているとは言え
肝心のストーリーは難解と言うか怖かった様な
余りにもショッキングな番組と言ったイメージが
濃厚でした。
氷の死刑台もガス人間第一号がベースとなって
いる作風で私も、この回で印象に残る言葉として
西沢氏が助手にモルモットか!と言う所が私には
シリアスに響きました。
意外と、この言葉が今回のキーワードとも言えます。
この回の救い?と言っていいのか初代クラウン、
MS40そして50が連続して出て来るシーンです。
第2話(実際は1話)で岸田氏が的矢所長に言う正
に現代の怪奇・・・と言うセリフが怪奇大作戦が言
いたかった怪奇だっのかもしれません。
所でMXの怪奇終了と合わせたのか?
NHKでは新作サンダーバートとオリジナル版を
合わせて放送が始まっているので目が離せませ
ん(笑)

>星川航空整備部さん

 子供の頃はショッキングな描写の方に眼が行きやすいですが後から観返すたびにその濃密さに引き込まれるのが怪奇大作戦の怖い所ですね(笑)

 氷の死刑台などは典型的です。

 ところで怪奇大作戦の後番組が白黒版のブースカで決まった様で円谷劇場が続くのには少しほっとはしていたりします(ですが深夜枠にはあまり似合わないですね)

かわいそうに、あの男は既に7年前に殺されてたんだ。7年もの間、氷の死刑台で殺され続けてたんだ・・・

「氷の死刑台」というと、エンディングでサンビームで射殺された岡崎のシーンで牧が口にする「かわいそうに、あの男は既に7年前に殺されてたんだ・・・いや、7年もの間、氷の死刑台で殺され続けてたんだ。狂った死刑執行人の手によって……そしてそれが今、終わったんだ」という牧のモノローグが印象深いエピソードですよね。

僕が「怪奇大作戦で好きなベストエピソード」を挙げるとすれば、「氷の死刑台」「かまいたち」
「ジャガーの目は赤い」「呪いの壺」「京都買います」の5本を挙げますが、このブログを知って「氷の死刑台」にコミカライズ版があることを知り驚きました。

ブログにある岡崎(冷凍人間化した男)の息子が三沢を攻める…という描写は本編でも見たかったですが、「正気を失った加瀬は岡崎に見捨てられ、発狂する」という形で退場したのを覚えていますが、コミカライズにある「発狂した加瀬が自らを冷凍化して事件からの逃亡と実験の継続を図る」という衝撃のラストも「加瀬もまた、岡崎と同じ道を踏んでしまったのか?」と印象を感じました。

余談ですが、この回といえば、エンディングや牧の「宇宙旅行か……人類の夢が数十光年の星に到達する。その為には人間の命は短過ぎる。宇宙開発を進めていく為には、この問題も解決しなければ。人間を低温で保存する・・・」という牧のモノローグのシーンで「第4惑星の悪夢」に登場するスコーピオン号の映像が流れてたような…。

Re: かわいそうに、あの男は既に7年前に殺されてたんだ。7年もの間、氷の死刑台で殺され続けてたんだ・・・

> 時間ですよ、しんこちゃんたびたび さん

 エンディングのスコーピオン号(また機体にでかでかと船名が書いてある)を観た時は「手を抜きやがったなあ」なんてつい思ってしまう私もすっかりすれたおっさんになりました(笑)

 加瀬の発狂シーンは西沢利明氏の数ある悪役の中でもひときわ強い印象を残します。ある意味本編で一番怖かったのがそこかもしれません。
 この前後の時期、西沢氏は悪役と「いいひと」役が半々くらいのイメージでした。正義感の新聞記者を演じる主演作のテレビシリーズすらあったくらいですから尚更加瀬のシーンが際立って見えたとも言えます。