「悪魔っ子」

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 ウルトラQネタもそろそろ佳境です。
 今回は製作初期の異色作「悪魔っ子」から

 魔術団の催眠術師の父親に夜毎催眠術を掛けられて眠る様になった少女が肉体と精神の分離が起こす。
 内気でおとなしいはずの少女から分離した精神体は無邪気に自らの物欲の赴くままに殺人を重ね、遂にはその精神が肉体にとって変わるべく本体である少女を破滅へと導いてゆく。

 字面だけ取れば「ジキルとハイド」タイプのゴシックホラー的な話ですが、肉体と精神の分離を「シナプスの破壊現象」と呼称し少女を元に戻すために「超短波ジアテルミー」と言う科学兵器(笑)を使う等の描写を駆使する事で「科学怪談」の様相を見せる辺りがウルトラQ的と言えます。
 シナプスの破壊現象の実験で「一平君の幽体離脱」を実演してみせるのもその一例ですが、人間の精神の離脱をも科学的、理知的に解釈しようとする傾向はあの当時の空気のひとつでもあると同時に円谷プロのポリシーのひとつでもあったと言えます。
 ですがこのシークエンスは同時に「シナプスの破壊による肉体と精神の分離が条件さえそろえば誰にでも起こりうる」事をも示しており「アンバランスゾーン」のポリシーのひとつでもある「日常から非日常への飛躍」を示しているのも見逃せません。
 
     
 そういえばあの当時の怪談や心霊現象の話で必ず聞く台詞のひとつに「人工衛星が飛ぶ時代に幽霊なんてばかばかしい」と言うのがありましたが(よく考えると宇宙ロケットと心霊現象なんて本来まるで無関係な事象と思うのですが)心霊現象に科学的な裏付けを与えたドラマ作りというのは後にも先にも例がない気がします。
 それだけでも本作はウルトラQの中でも初期の作品であるにも拘らず異色作と言えます(とはいえ、この路線には製作直前にお蔵入りした「幽霊自動車」と言う後続も予定されてはいたのですが)

 更には後の怪奇大作戦や恐怖劇場アンバランスなどの円谷ホラー・サイコ路線の原点でもあります。

 ですが、後続のシリーズでは突き詰めて行ってしまっても結局のところ「科学や技術が如何に進歩しても人間の心の闇は変わらない」現実に突き当たってしまう訳で円谷もある時期から事象に対する科学的な説明が放棄されたサイコ系作品(主に2時間ドラマですが)に舵を切る事になります。
 
 既にその萌芽は本作の本放送時のナレーション「一体、子供が犯罪を犯すものでしょうか?それも天使のように純真な子供が… しかし、子供がその環境によって脳組織のバランスを破壊された時、完全な犯罪者と成り得るのです」という部分にも暗示されています。
 ここでの主題は肉体と精神の離脱ではなく子供自身が誰でも持っている闇の部分にあると説いていた訳で後の改変版ナレーションよりもはるかに衝撃的でした。

 ここで余談

 この種の「同一人物の持つ相反する心の分離」という主題は前述のジキルとハイドをはじめとしていくつものバリエーションがあり映像化された物でもかなりの数に上ると思います。

 その大半は魂の中の善と悪と言う二元化で描写される物ばかりですが「悪魔っ子」では「同一人物の中の躁的要素と鬱的要素の分離」として語られている点が特徴的です。
 似た主題だとスタートレックのカーク船長も同じ様な体験をしますし、昔のテレビアニメのプリティサミーだったかも確か同じ主題を扱っていたと記憶しています。

 更に個人的にこのバリエーションで好きだったのが10年ほど前に放映された「ガドガード」と言う深夜アニメでして、ここに登場する主人公の父親が分裂したのは「愛するものを守ろうとする父親の心」と「どこまでも夢を追い求める男の心」に分離するというシチュエーションになっており、どちらも同一人物の心の芯になる部分の分裂だけに単純な善悪二元論よりも共感しやすかったと思います。
 (残念ながらこれらが説明されるクライマックスは地上波で放映されなかったので大半の視聴者にとっては単なる「唐突な打ち切りアニメ」にしか見えなかったのですが。私自身直後の真の最終回を含めたCS一挙放送で初めて本作の真価を知ったくらいです)


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アンバランス

 この回はアンバランス時代作品で円谷サイドが円谷科学劇場?と言うフォーマットを持って作成したストーリーで仮にTBSの栫井Pが
担当しなかったと仮定すると怪獣物では無くアウターリミッツまたはミステリーゾーンの日本版と言う色が濃厚な作品となり意外とMJ
の様な巨大メカ物がシリーズ化された可能性もあります。
ジキルとハイド~フジで作成されて放送が怪奇劇場アンバランス同様に深夜帯で終わった異色作ですが83年の夏にTV神奈川で昼間の
再放送にかかっていました。
だけど、この放送自体知らない人が多かったとは。
しかしQ未製作の豪華客船SOSやマグマそして幽霊自動車は製作されていれば独特の特撮とSF性の高いドラマが生まれていたのかと思う
と残念な気もします。
それでは(笑)
前に話したQとアイフル大作戦、怪奇大作戦を合わせたイギリス映画とは直訳する宇宙から吸血鬼~原題はナイト・コラー・フローム
ザ・アウタースペースと言う作品で燃えよドラゴンで有名?なジョン・サクソン氏主演で話はロンドンにUFOが飛来し軍が調査すると
謎の球体(ドッジボール状な物?)が一先ず研究所へ・・・しかし謎の怪人が車を奪い逃走~その後ロンドン市内で若い女性の失踪事件
が発生し犯人は例の怪人!
科学者のサクソンと警察が追い詰めると怪人は滅びゆく星から来たミュータントでなんやかんだと文句を行った後、球体に乗って?
宇宙へ消える。
空高く舞い上がるミュータントの球体を見てサクソンが哀れなヤツ・・・恐らく、そう言っていると思う。
ちなみに英語版で字幕なしなので(笑)
イギリス陸軍のランドローバーが嫌と言うほど出てくるのが救いなヤツです。
ランドローバーと言うと60年代のイギリス製B級SFには必ず出て来る武骨な車で私は好きですね!
代表作を上げると65年作品の地球は壊滅するです。

Re: アンバランス

>星川航空整備部 さん
 個人的な印象ですが、初期アンバランス(もちろんQの原型の方ですw)が指向しようとしていた路線の一端は(特撮のしょぼさを差し引いて、ですが)70年代頃のNHKの少年ドラマシリーズのSF/幻想系作品や単発のSFものドラマなどに多少は引き継がれているのではと思っています。ただ主なものの大半がビデオ原版が文字通り消滅した物ばかりなのが何ともですが。

 ジキルとハイドが地上波再(?)放送ですか。凄い時代でしたね。

 あの作品はCSの一挙放送で観た事がありますが、今だったら地上波では絶対放送不可能でしょうね(尤もあの頃のサスペンス物には1,2年に一度くらいの割合で突然変異的にバイオレンス&エロス系の番組が掛かっていたものですが)

>ナイト・コラー・フローム ザ・アウタースペース
 興味を持ったので他のサイトなどの情報もチェックしてみましたが、ストーリーを聞いているだけで頭が変になりそうな感じが(笑)50年代から60年代のSF洋画はこういう不思議なノリの作品が多いですね。

 実は私の手持ちが薄すぎるので纏めて書けないのですが、この時期のマイナーSF/怪獣関係の洋画のネタも近々はじめようかと思っている所です。