真夏の怪奇本2016から「昭和ちびっこ怪奇画報」

 熱帯夜の怪奇本シリーズ。

 今回はこれまでで一番新しい、それでいて内容はかなりレトロな一冊です。
 しかも切り口はこれまで紹介してきたものとはかなり異なります。
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「昭和ちびっこ怪奇画報」(初見健一著・青幻社)

 本書は「昭和ちびっこ広告手帳」「昭和ちびっこ未来画報」の姉妹編です。
 昭和40年代の少年漫画誌や児童書などの挿絵や特集グラビアの中から怪奇ネタの物を集めて一冊に纏めたものです。

 以前このブログでも紹介した「小学館のなぜなに百科」とか「ジャガーバックス」等でアシッドなイラストを話題にした事がありますが、それらのアシッドさは本来こうした怪奇、幻想系の題材に最も向いたものです。
 本書ではこの種のネタの定番である「心霊」を筆頭に「秘境」「異形」「残酷」「狂気」の5章に分けてサンデー・マガジン系週刊誌の特集グラビア、上述のなぜなに大百科のイラスト入り記事が集められています。 
 文章だけでもうすら寒くなるのに更にインパクト抜群のイラストが付いてくるのですから私を含めた当時の子供たちにとてつもないトラウマが植えつけられたのは間違いありません。

 実録系怪奇話だけではなく、小栗虫太郎の「人外魔境シリーズ」香山滋「人見十吉シリーズ」などの幻想小説の一場面もあったりするのですが原作を読んだ時ですらこれほど迫力あるビジュアルは想像できませんでした。
 これは明らかに活字で読む者の想像力をはるかに凌駕しているもので、それがトラウマの原因のひとつになっている気がします。

 それと石原豪人のイラストに限って言えば「登場人物の目ぢから」が半端ない事もこの印象に一役買っています。
 一方南村喬之のイラストは見開きいっぱいに過剰とすら言えるほどの情報が盛り込まれた「地獄の第パノラマ」みたいなイラストが多くてこれがまた「恐怖の総合百貨店」的な怖さを持っています。

 ですが実は本書を開いて私が衝撃を受けたのはそのアシッドさだけではありません。
 本書に収録されているグラビアのいくつかは私が子供の頃にトラウマになった題材が雑誌掲載時そのままの形で採録されていたのです。
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(「昭和ちびっこ怪奇画報」より引用)

 たとえばこの頁などは初出が少年マガジンの1970年26号のものだそうですが私にとっては45年ぶりの再会となるものです。
 当時はこれを読んで3か月くらいはうなされるほどのインパクトがありました。
 (余談ですがこの記事の載った特集はたしか「クルマ絡みのミステリー」だった記憶があります。このブログでも何度か取り上げている藤代バイパスのトヨペット消失事件も掲載されていました)

 ですからその衝撃は「過去のトラウマの復活」を通り越して「何十年かぶりに旧友に再開した」という感覚に近いものでした。
 以前取り上げたある怪奇本で「昔の事は幽霊でもなつかしい」とあったまさにその感覚なのです。

 私の取って本書の感触は「あの頃の夏休み、田舎の草いきれと飛び回る蚊の群れ、お盆時の線香の匂い」 そして「駅前の看板にドーンと貼られる『公民館の怪談映画の上映会のポスター』とかお寺の裏の暗闇」とかだったりします。
 その感覚を支えているのはそこに描かれているイラストであり、当時の語り口だったりします。
 これらのグラビアのイラストの画風は全般にかつて縁日なんかによく出張していた「お化け屋敷」の見世物に共通した感覚があります。
 (実際あの頃のお化け屋敷の看板類はこの手の石原豪人風の絵がでかでかと飾られていた事が多かった)

 その目で見直すとこれらのイラストがずらりと並んだ本書はさしずめ「読むお化け屋敷」とでも言いましょうか。

 ですから本書を読むならLEDの灯りのもとでエアコンをきんきんに効かせた部屋は似合わない。
 白熱球の灯りの下、蚊取り線香の匂いの漂う蚊帳の中で読むのが本来は一番似合っている気がします。


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コメント

非公開コメント

まさに

 まさに現代の怪奇・・・では無く私達が小学校時代に本気で信じて熱く読んだ怪奇物ですね。
南村さんと言えば実在する怪獣のイラストには定評?と言うか、ある種のトラウマに陥る怪獣イラスト(笑)
特に本当ですか?と言いたくなるスクリューのガー助!ネッシーを捕らえろ(自衛隊らしき部隊がバズーカやオリを持参?)のイラストも
、まさに描かれた絵から出る魔力と言うか一種の怪奇かもしれませんね。
写真と違い絵で伝えると言うのは以外にも難しく、これらの事柄が紹介された本が出たのも第一期そして二期怪獣ブームも後押しとなり
当時の朝日ソノラマから出て居た怪獣絵本図鑑と同じ構図で引いて行ったのも実に上手い手法としか言いようがありません。
光山市交通局さんの言う通りクーラーの効いた部屋で読む物では無いし怖いイラストが出て居るページは避けて読みたいけど見ちゃうん
ですよね(笑)
私は怖いと言うか見たくなかったのは1952年にアメリカで目撃された3mはある巨大宇宙人のイラストで木の横で立って居る姿が
不気味で!
もしかしてコレも載って居ますか(笑)

Re: まさに

> 星川航空整備部さん

 3Mの宇宙人も懐かしいですね。本書には載っていませんが当時の円盤関係の本には必ず出ていたと記憶します。
 それどころか80年代にはゼネプロで商品化された事もあった様な(笑)

 当時の怪奇本のトラウマの何割かは間違いなく挿絵のインパクトによるところが大きいですね。

 最近うちの子供の読むような本にはこれが一番欠けている気がします。
 怖いものは怖いときちんと認識させるようなイラストと言うのも必要ですね。