渡瀬恒彦氏の逝去に思うこと

 先日マイケル村田さんのコメントを頂きましたが、そこにもありますように先日俳優の渡瀬恒彦氏が逝去されました。

 実を言いますと私自身第一報を聞いた時には「まさか」と言う思いが強く、今も信じられない思いです。
 渡瀬氏の作品として個人的に印象深いのは何といっても「大激闘 マッドポリス80」の氷室キャップ役です。

 この作品は今でも年に複数回は観返すのですが、第二話の中でジャパンマフィアの幹部の一人である麻薬捜査官とのやり取りでの「ハンカチ返してなかったね。ちゃんと返しますよ・・・明日」という文字通り氷の様な視線を相手に投げ返して去って行くカットの凄味はテレビと言うフレームを介しているのに視聴者を直接睨み殺すかのようで強い印象を感じました。

 渡瀬氏自身はこれ以降刑事ドラマでの露出が増え、最近では「警視庁捜査一係9課」「SP」などでも活躍されていましたが、一見昼行燈の切れ者と言う設定のキャラクターは「いつか氷室キャップみたいな物凄い貌を晒す時が来るのでは」とか思わせた物です。
 これらの狂気すら感じさせる危険な香りは元々劇場作品での渡瀬氏の持ち味だったところで、後になって「狂った野獣」とか「暴走パニック大激突」などを視聴(ほとんどカースタント目当てで見ている所が何ともですが)した時「狂犬俳優」の綽名が伊達でない事を実感させられたものでした。

 それと渡瀬氏自身撮影でスタンドインを使わずどんな危険な撮影でも本人が演じていたという事ですが上述の「マッドポリス」のOPで「柵を突破しカメラに向かって突っ込んでくるRX-7を直前でスピンターンさせ真横を向いた所で車内からカメラ目線で発砲する」ところをワンカット数秒間で決めてみせるなんてのはそうした経験の積み重ねを端的に感じさせる部分と思います。

 一方でマニア向けの作品での露出が少ないのであまり話題になりませんが、70年代終期~80年代前半にかけてはSF、特撮物でも存在感のある演技を発揮されています。世間の評価は低いですが東映の「恐竜・怪鳥の伝説(昭和52年)」では青木が原に潜む恐竜を探索する青年科学者で主演されています。ここでも恐竜生存説を主張していた亡父の口調を牧冬吉氏との掛け合いで再現するくだりがあるのですが、本編に登場しない亡父の人となりが浮かんでくるようなリアリティを感じさせました。

 怪獣物はこれ一本ですが従来の怪獣物の主人公のどれとも異なる冷静な、それでいてどこか破滅型のキャラクターを演じきった渡瀬氏の演技はこれまた印象的です。とはいえ氏の資質は平時の日常が突然断ち切られる形での疑似イベント型のSFで最大に発揮されていた気がします。
 「戦国自衛隊」で戦国自体に投げ込まれながらも主人公の伊庭3尉への屈折した感情を捨てきれずに反乱に走る矢野士長、「復活の日」では伝染病による恐慌状態の世界から隔離された南極で生死不明の妻子への思いからブリザードの中に彷徨いだしそのまま帰らぬ人となる辰野隊員、「首都消失」では市井のエンジニアとして、東京を覆い尽くす謎の雲の探索に参加し自らを危地にさらしつつも冷静に分析し対策を立てる主人公の朝倉とそれぞれ三者三様の異なる持ち味のキャラクターを演じきったのも個人的に印象に残るところでした(世間の評判とはうらはらに上述の作品はどれも私個人は好きな作品だったりするのですが)

 あまりに突然の話の混乱もあるのでしょう、やはり書いていてどうにも纏まりません。

 謹んでご冥福をお祈りいたします。


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コメント

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No title

彼は、本当に沢山のドラマに出てくださいましたね。それは知ってたんですが、戦国自衛隊や東映初期の映画に出てたのは知りませんでした。それにしても破滅型の主人公も映画で演じてたのは驚きです。

Re: Re: No title

> 光になれさん

 渡瀬氏が好人物を演じる様になったのはここ15年ほどでしょうか。狂犬系の演技を私が最後に見たのは95年か96年頃の「忠臣蔵外伝・四谷怪談」の堀部安兵衛役の時だったと思います。17歳下の佐藤浩市との競演でしたがまるで年齢差を感じさせない若々しい凄味がありました。

 「皇帝のいない8月」もかなり強い印象が残る一本です。

 テレビでは「おしん(昭和58年)」が印象的でした。というのもこの作品は主人公のヒロインが「小林綾子~田中裕子~乙羽信子と同一人物が年齢に合わせて3度も変わる」ドラマ(ほかのキャストも年齢に合わせて代わった人が多い)だったのに渡瀬氏が演じた初恋の相手は同じ渡瀬氏が一貫して演じていました。当然乙羽信子が演じていた時は老人のメイクをしていましたが当時の渡瀬氏は40歳手前位だったと思います。